入院費用を払えない場合に使える5つの救済制度と3つの解決方法!

お金のコラム

どんなに健康な人でも、思わぬ病気になったり、大きなケガをする可能性はあります。

ご自身、もしくは家族が急に入院することになったら、ちゃんと病院代を支払うことはできますか?

医療保険に入っていたり、ある程度の貯蓄をしているという方は、あまり心配いらないかもしれません。

ただ、ボーナスカットや給料の据え置きが珍しくない昨今、「もしものため」にお金を回せている人ばかりではないと思います。

一言で病院代と言っても、診察料や検査費用、手術費用、食事代、差額ベッド代、雑費など、様々な費用がかかるんです。

ご存知の通り、健康保険に加入していれば、保険適用外のものを除き、最低でも3割負担で済みます。

しかし、重い病気やケガになれば、3割と言っても、たくさんのお金が必要になります。

生命保険文化センターの平成25年度の調査によると、入院費用の自己負担額の相場は、平均22.7万円で、1日の負担額は、平均21,000円でした。

入院すると、多額のお金が必要になることがわかりますよね。

今回は、入院費が足りない場合、どうすればよいか、ご説明します。

医療費を払えない場合の5つの救済制度

①高額療養費制度

高額療養費制度とは、1ヶ月に支払った医療費が高額になった場合に、一定額(自己負担限度額)を超えた分のお金が払い戻される制度で、健康保険や共済組合などの公的医療保険に加入していることが条件となります。

自己負担限度額は、年齢や所得などによって、異なります。

【70歳未満の方】

所得区分 自己負担限度額
標準報酬月額83万円以上 252,600円+(総医療費-842,000円)×1%
標準報酬月額53万円~79万円以上 167,400円+(総医療費-558,000円)×1%
標準報酬月額28万円~50万円以上 80,100円+(総医療費-267,000円)×1%
標準報酬月額26万円以下 57,600円
住民税非課税者等 35,400円

 
【70歳以上75歳未満の方】

所得区分 自己負担限度額
現役並み所得者(標準報酬月額28万円以上等) 80,100円+(医療費-267,000円)×1%
一般(現役並・低所得者以外) 44,400円
低所得者(住民税非課税等) 24,600円
低所得者(地方税法の規定による
市町村民税に係る所得がない)
15,000円
例)年齢:35歳/月収:30万円

医療費が、1ヶ月に100万円かかったが、自己負担は3割なので、30万円を病院で支払った。
自己負担限度額は、80,100円+(1,000,000円-267,000円)×1%=87,430円となるので、30万円-87,430円=212,570円が支給されることになる。

注意点は、月をまたぐと、合算はできないということです。

例えば、1月31日から5日間入院した場合、1月分と2か月分に分かれてしまうので、もしも入院期間が選べる場合は、このように月をまたがないようにしましょう。

なお、高額療養費制度によって後からお金が払い戻されるとはいえ、一時的でも支払いが難しいという方は、限度額適用認定証の交付を受けておくと、病院で支払う医療費が、最初から、自己負担限度額までとなります。

前もって、入院することがわかっている場合は、手続きをしておきましょう。

もしも、限度額適用認定証がなくて、高額な医療費を支払わなくてはいけなくなった場合、「高額療養費委任払い制度」もあります。

高額療養費委任払い制度とは、国民健康保険の加入者のみ、やむを得ない事情がある方に限り、病院で申請書などを記入すると、自己負担分のみの支払いとなる制度です。

②高額療養費貸付制度

高額療養費制度でお金が払い戻されるのは、早くても、申請から3ヵ月後です。

お金が戻ってくることはわかっていても、それまでの生活費が負担になるという方には、高額療養費貸付制度があります。

高額療養費貸付制度とは、高額療養費制度で戻ってくるお金の約8割(社会保険加入の場合)もしくは約9割(国民健康保険加入の場合)を、無利息で借りられる制度です。

加入している保険によって、少し異なりますが、基本的に、高額医療費貸付金借用書・高額療養費支給申請書(貸付用)・医療機関でもらった領収書や請求書のコピーを持って、加入している保険の窓口へ申請すれば、2~3週間後には、口座にお金が振り込まれます。

あくまでも、高額療養費の8~9割が、先に支払われるという形なので、わざわざ返済する必要もありません。

高額療養費と相殺されて、残りの約1~2割が、予定通り振り込まれる仕組みになっています。

高額療養費貸付制度の利用条件は、健康保険や共済組合などの公的医療保険に加入していることです。

③傷病手当金制度

思いがけない病気やケガで、会社を休まざるを得なくなった場合、傷病手当金制度の申請が可能です。

傷病手当金制度とは、健康保険(国民健康保険は除く)・共済組合などの加入者が、病気やケガで働くことができず、会社を連続して休み始めた4日目から最長1年6ヶ月まで手当金がもらえる制度です。

支給される金額は、標準報酬日額の3分の2程度です。

標準報酬日額は、支給開始日以前の継続した12か月間の各月の標準報酬月額を平均した額÷30で計算したもので、平均の給与金額をいくつかの等級に分けたものになります。

例)標準報酬月額30万円の人が、30日間連続で会社を休んだ場合

標準報酬日額:30万円÷30日=10,000円
1日あたりの傷病手当金:10,000円×2/3≒6,667円
傷病手当金の合計:6,667円×27日分(最初の30日分を除く)=180,009円

    
加入している保険の窓口に申請すれば、2週間~2ヶ月程で、お金を受け取ることができます。

ただし、休職中でも給与を受け取っている、同じ理由で障害厚生年金を受け取っているなどの場合は、傷病手当金制度を受けることはできません。

④一部負担金減免制度

一部負担金減免制度とは、特定の理由によって医療費の支払いができない場合、自己負担額の減額・免除・猶予をしてもらえる制度です。

特定の理由とは、①災害によって財産に著しい損害を受けた場合 ②生計維持者が重症・死亡・行方不明になり医療費の支払いが困難な場合 ③事業の休廃止や失業により収入が著しく減少した場合などが、該当します。

この制度を利用するには、予め市町村等に申請する必要があります。

減額・猶予が受けられる期間や、減額率については市町村によって異なりますので、それぞれの市町村役場等で、ご確認ください。

⑤医療費控除

医療費控除では、一定額以上の医療費を支払った場合に、確定申告をすることで、支払った税金の一部が還元されます。

自分または自分と生計を一にしている家族が、1年にかかった医療費が控除対象となります。

【医療費控除の対象となる金額】

医療費控除の金額は、次の式で計算した金額(最高で200万円)です。 

(実際に支払った医療費の合計額-(1)の金額)-(2)の金額

(1) 保険金などで補填される金額
(例) 生命保険契約などで支給される入院費給付金や健康保険などで支給される高額療養費・家族療養費・出産育児一時金など
(注) 保険金などで補填される金額は、その給付の目的となった医療費の金額を限度として差し引きますので、引ききれない金額が生じた場合であっても他の医療費からは差し引きません。

(2) 10万円
(注) その年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等5%の金額

引用元:国税庁 No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)

例)1年間に、医療費が50万円かかり、保険金などの補填がない場合

50万円-0円-10万円=40万円
ここに、所得税率を掛けた金額が、還付金となります。

医療費控除を受けるには、病院でもらった領収書などが必要となりますので、大切に保管しておきましょう。

医療費が全額戻ってくるわけではありませんが、自分から申請しなければ、お金は一切戻ってこないので、損のないように、手続きをしてくださいね。

民間の医療保険も賢く組み合わせることで、万が一の時も安心!

もちろん、お金に余裕のある方は、こういった制度だけではなく、民間の医療保険の加入も検討してみてください。

〔民間の医療保険に入るメリット〕
女性特約や先進医療など、公的な制度ではカバーできない部分を補うことができる
・保障が一生涯続く、終身医療保険がある
・積み立て型を選べば、保障に加えて、貯蓄ができる
・いざという時の「お守り」として、入っていると、精神的な安心が得られる

このように、公的な医療保険と民間の医療保険を組み合わせることで、より手厚い保障が受けられる可能性があります。

それぞれの特徴を知って、あなたにピッタリの保険を選んでくださいね。

→保険見直し本舗の公式サイトはこちら。

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治療費が払えない場合の3つの解決方法

①病院の窓口で相談する

大きな病院であれば、受診や入院に伴う困りごとに対して相談を受けてくれる医療ソーシャルワーカーが在籍しています。

在籍のない病院でも、看護師や窓口の事務員に、医療費の支払いが厳しいという旨を相談できます。

減額してもらうことはできませんが、経済状況によっては、分割払いや支払いの猶予に対応してもらえる場合がありますので、まとまったお金を用意できない人は、一度、相談してみてください。

ただし、分割や猶予をしてもらった後は、信頼関係のためにも、支払いに遅れないように、十分注意しましょう。

また、病院によっては、クレジットカードでの支払いができる場合がありますので、カード払いを検討してみるのもいいでしょう。

「今すぐには払えないけれど、もう少し後なら、お金が用意できる」という方は、クレジットカードであれば、必然的に、支払いを先延ばしにすることができますよ。

②親や親戚に相談する

もしも病院で、分割などに応じてもらえない場合や、相談しに行く時間がないという方は、まずは身内に相談してみましょう。

お金を借りられるのならば、一時的に立替をお願いし、病院に支払いを済ませることも1つの手段です。

ただし、借りる以上、返済を後回しにせず、早めに返せるように努力しましょう。

③キャッシング・カードローンを利用する

「身内に病気だということを知られたくない」「すぐにお金が必要」という方は、キャッシング・カードローンを利用することをおすすめします。

「借金なんてコワイ」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、しっかりと仕組みを理解し、うまく使えば、怖くありません!

なお、キャッシングやカードローンは、使い道が自由なので、病院に支払う治療費の他、退院後の生活費にも使えます。

また、入院には、公的な制度が利用できないような、細々としたお金がかかります。

例えば、昼間に子どもを見ていてくれる人がいなければ、預ける施設に支払うお金、配偶者が料理を作れない場合は外食代。

その他に、テレビカード代・帰りのタクシー代・売店で雑誌や飲み物を買うお金・医師から指示のあるもの(例えば前開きの寝巻き等)の購入費・お見舞いに来てくれた方へのお礼など、あげだしたらキリがありません。

更に、仕事を休んでいる間、収入がストップしてしまっても、その間に家賃や家のローンの支払いをしなければならない方もいらっしゃるでしょう。

辛うじて入院費用は捻出できても、急な出費で退院後の生活費に追われる方も多いので、そういう方からも、キャッシングやカードローンは、一時的な費用の補填として選ばれています。

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入院費を払えない上に仕事もできなくなったら、生活保護も視野に入れるべき!

病気やケガで働けなくなって収入がなくなり、生活費がまかなえない場合は、生活保護も検討してみましょう。

もしも申請に通れば、生活保護費が受け取れるだけでなく、その後、病院にかかっても、医療費の自己負担なしで、健康保険と同等の医療を受けることができます。

申請をするには、お住まいの地域の福祉事務所に行って「生活保護を受けたい」という旨を相談してください。

福祉事務所の場所は、厚生労働省のサイトから、探すことができます。
生活保護と福祉一般:福祉事務所一覧

なお、入院中に生活保護を申請する場合は、病院を通じて申請することも可能です。

審査に通過するには様々な条件がありますが、実際に、病気やケガがきっかけで、生活保護受給者となるケースも少なくありません。

入院費が払えないからと言って、未払いのままにしておくとどうなるのか?

入院費を支払わずに退院すると、まずは病院の事務員から電話や文書で催促され、場合によっては、自宅訪問が行われることもあります。

滞納額が大きかったり、未納期間が長い場合、それでも支払いに応じないと、内容証明郵便が送られてくるケースがあります。

内容証明郵便は、内容自体に強制力があるわけではありませんが、催促したという「証拠」を残す目的で送られます。

また、弁護士などの専門家の名前で送付されることが多いので、心理的なプレッシャーがかかることでしょう。

このように再三、催告されたにも関わらず、支払いをしない場合は、訴訟手続きが行われます。

最悪の場合、給料や財産の差し押さえが行われ、未払いの医療費を強制的に回収されます。

このように、近年、入院費を払えない、あるいは払わない人が増えていて、医療費の不払いが社会問題になっています。

そのため、入院時に予め入院保証金として、5~10万円程度、請求されることがあります。

入院費を支払わず退院をしてそれっきりというトラブルを防ぐために支払い、入院保証金は、退院時に支払う医療費と相殺・清算されます。

入院費用が払えないと、強制的に退院させられるの?

病院では、後払いが基本ですし、美容整形や歯の自費治療などを除いて、お金がないという理由だけで、患者さんをお断りするということは、ありません。

そのため、「入院費用が払えないとわかった時点で強制退院させられる」なんてことも、もちろんありません。

ただし、不払いのままでいると、心証も悪く、病院内はもちろん、地域の病院にまで噂が広がることもあるので、注意しましょう。

なお、しっかりお金を払っていても、飲酒・大声・暴力、その他の迷惑行為をすると、強制退院になる可能性もあるということは、言うまでもありません。

入院費用を安くする方法! 節約するなら、極力、個室は利用しないようにしましょう

実は、入院費用の中で、大きな負担となる一因が、差額ベッド代です。

差額ベッド代は、差額室料とも呼ばれ、個室(特別室)に入院した時に発生する病室費用のことを指します。

差額ベッド代がかかる部屋は、以下の4つを満たしていることが条件になります。
① 1室の病床数は、4床以下であること
② 病室の面積は、1人当たり6.4平方メートル以上であること
③ 病床ごとにプライバシーを確保するための仕切り等があること
④ 個人用の私物の収納設備・照明・小机・椅子等があること

1人部屋の時だけかかるというイメージがあるかもしれませんが、2~4人部屋でも、差額ベッド代が掛かるんです。

では、差額ベッド代は、いくらくらいになるのでしょうか。

差額ベッド代は、病院が自由に決められますが、全国平均は、以下の通りとなります。

1人室 7,812円
2人室 3,130円
3人室 2,878円
4人室 2,509円

 
予想通り、人数が少なくなればなるほど、高くなります。

あくまでも平均額ではあるものの、これは1日あたりの金額であり、仮に30日間1人部屋で入院したとすれば、7,812円×30日=234,360円が差額ベッド代としてかかることになります。

しかも、差額ベッド代は、社会保険適用外なので、全額自己負担になるんです。

ちなみに、差額ベッド代の支払いをしなくていいケースは、以下の通りです。

1.同意書を書いていない場合
2.病院の都合で個室に通された場合
3.治療の都合で個室に通された場合

基本的に、本人が個室を希望し、かつ同意書にサインをしない限り、差額ベッド代の支払い義務はありません。

空いていないからという理由でも、同意書にサインを求められることがありますが、サインをしてしまうと、差額ベッド代を請求されてしまうので、書類の内容に目を通さないままサインをするということはないようにしましょう。

どうしても個室じゃないと無理!という人以外は、5人以上部屋を選ぶと、入院費を抑えられますよ。

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入院費用や手術費用が払えない場合には、制度を知っておかないと損をする!

ただでさえ、病気やケガで苦しい時に、お金のことで苦しみたくないですよね。

ご紹介したように、入院費用を払えない場合には、たくさんの制度が用意されています。

しかし、日本での社会制度は、基本的に「申請主義」、つまり、こちらから申請をしなければ、いくら条件を満たしていても、適用されないんです。

言ってしまえば、現実は、その制度を知らずに苦しんでいる方もいるというわけです。

お金のことなので、誰かに相談したりすることができず、情報を得られないケースも多くあります。

ただし、制度を利用すれば、解決に結びつくことがありますので、まずは、市町村役場や福祉窓口に相談してみてくださいね。

本ページは2017年5月30日時点での情報です。
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