子どもが生まれたら、将来かかる教育資金を確保する方法として、学資保険の加入を考える方が多くいらっしゃると思います。
「子どもが生まれたら学資保険」と言われるくらい、学資保険は教育資金を貯蓄するために利用されるメジャーな保険です。
現在では金融商品の多様化により選択肢が増え、学資保険に加入する以外の方法で教育資金を貯蓄することが可能になっています。
「学資保険って本当に必要なの?」
今回は、学資保険のメリット・デメリットを紹介し、学資保険の必要性を解説していきたいと思います。
目次
学資保険とは
学資保険とは、子どもの教育資金の確保を目的とした保険のことで、毎月一定の保険料を払い続けると、契約時に決めた時期に積み立てたお金を受け取ることができる保険なのです。
入学金や授業料など、まとまったお金が必要なときに、学資保険金としてお金を受け取ることができる以外に、保険の内容によっては、契約者である親が死亡したときや、子どもが入院したときに保険金が受け取れる保証がついている学資保険もあります。
学費はいずれ必ず必要になってくるものです。
いつ、どれくらいの学費が必要になってくるのか、教育資金を準備するために知っておきたいところですよね。
次に子どもにかかる教育資金が必要な時期と金額をご紹介したいと思います。
教育資金はいくら必要?大学卒業までいくらかかる?
幼稚園~高校までの学習費総額は以下の通りになります。
私立:498,008円
小学校 公立:321,708円
私立:1,535,789円
中学校 公立:481,841円
私立:1,338,623円
高校 公立:409,979円
私立:995,295円
※平成26年度の年額です
※学習費総額は、学校教育費・学校給食費・学校外活動費(学習塾、習い事などへの支出が
含まれます
参考:文部科学省「平成26年度学校種別の学習費総額」
この調査の結果、幼稚園3歳から高等学校第3学年までの15年間において、すべて公立に通った場合は約523万円となり、すべて私立に通った場合は約1.770万円となりました。
すべて私立に通った場合は、すべて公立に通った場合の3.38倍にもなり、公立・私立のどちらかの進路を選択するかでかなり大きく変わってくることが分かります。
そして、一番お金がかかる大学の教育費総額は以下の通りになります。
(単位:万円)
国公立大 (4年) |
私立文系 | 私立理系 | 私立短大 (2年) |
|
入学費用 | 79.7 | 95.9 | 120.1 | 78.3 |
在学費用 (1年間) |
101.3 | 149.8 | 189.9 | 156.3 |
※入学費用:平成28年4月に高校以上の学校へ入学するためにかかった費用
※在学費用:授業料・通学費・教科書代・家庭教育費(おけいこごとの費用など)
※在学費用は、28年度における見込額
参考:日本政策金融公庫 平成28年度「教育費負担の実態調査結果」
大学へ進学することが当たり前になっている今、国公立大学で4年間に約485万円、私立の場合では文系で約700万円、理系では約880万円ものお金が必要になります。
計画性をもって教育資金を準備する必要があるので、出産を機に学資保険の加入を検討し始めるわけですが、教育資金を準備するだけだったら、貯金をコツコツしていけばなんとかなりそうですよね?
あえて学資保険に加入する必要性ってあるのでしょうか?
学資保険の必要性とは?学資保険の魅力って何?
出産を機に多くの方が検討する学資保険ですが、学資保険に加入するのには理由があるんです。
学資保険の魅力って何なのでしょう。
②利息がつく商品があり貯蓄性が高い
③親などの契約者に万一のことがあったときの保障がついている
学資保険は、「学費を貯める」という目標を達成しないと意味のない保険です。
そのため、安全で確実に貯蓄ができ、親などの契約者が万一の事態があったときにそれをカバーできるような保障内容になっていることから、子どもの将来にとって必要性が大きい保険のひとつなのです。
しかし学資保険は、無事に満期を迎えて初めて利益が出る保険なので、保険料の支払いが困難になり、途中で解約してしまうと大損してしまうデメリットがあるのです。
次に学資保険のメリット・デメリットを詳しく見ていきましょう。
学資保険のメリットとデメリットについて
学資保険のメリットとは
計画的に貯金ができる
毎月、決まった保険料が指定口座から引き落とされるので、強制的に貯蓄ができる点では貯金の苦手な方にとってメリットが大きいです。
また、支払い方法が「月払い」「半年払い」「年払い」「一括払い」があるので、毎月の支払いが難しい方はボーナス時期に年払いするなど、自分の状況によって支払い方法が決めることができるのです。
そして、「月払い」よりも「半年払い」、「半年払い」より「年払い」、「年払い」よりも「一括払い」に選択する方が、払い込む保険料の総額が安くなるんです。
貯蓄性が高い
商品によって学資保険は、自分が支払った払い込み保険料よりも、受け取れる金額(満期金)の方が大きくなることがあるのです。
普通預金の金利が0.001%程度で、定期預金でも0.02%~0.2%程度なので、銀行に預けてもほとんど利息がつきません。
一方、学資保険では、満期金が返戻率100%を上回っている商品が多く、コツコツ銀行へ貯金するよりはメリットが大きいことが分かります。
返戻率とは、払い込んだ保険料の総額に対して、どのくらいプラスになって戻ってくるかを表したもので、%で表示しています。
つまり、返戻率が高ければ高いほど、貯蓄性があり、契約者にとってお得な商品で、返戻率が100%を下回る場合は元本割れを意味しているのです。
例えば、返戻率110%の学資保険に加入し、満期を18歳に設定して毎月1万円を18年間払い込んだ場合にプラスになるお金は、
18年間に払い込んだ保険料プラス21.6万円を満期時に受け取ることができるのです。
低金利時代にこの利益は有難いですね。
払い込み期間を短くすると返戻率はさらに上がり、返戻率は保険会社や契約時の年齢、払込期間、満期時期によって変動するのです。
参考までに、保険会社の学資保険の返戻率は下記の通りです。
- フコク生命「みらいのつばさ」104.7%~105.5%
- ソニー生命「学資保険」110.3%~115.9%
- JPかんぽ生命の学資保険「はじめのかんぽ」94.5%~95.5%
※契約者30歳男性、被保険者である子どもが0歳時に加入としています。
※満期時の設定、満期金の受け取り方、プランは同一のものではありません。
後述しますが、子どもの医療保険などの保障をつけると元本割れする商品もあるので、貯蓄性を重視するのであれば、医療保険などの特約が付帯している商品は、選択肢から外しましょう。
子どもの医療保障が本当に必要かどうか、家族としっかり話し合ってくださいね。
生命保険料控除が受けられる
学資保険でも控除が受けることができます。
ちなみに生命保険料控除とは所得控除の1つで、税金の負担が軽くなる制度です。
この控除の申請を行うと、払い込んだ保険料がその年の所得から差し引かれるので、所得税や住民税の負担が軽減されるのです。
学資保険は、将来の子どもの教育資金を蓄えるための商品なのですが、生命保険会社が販売している商品なので、「生命保険」と同じ扱いになります。
よって、生命保険と同様に控除の申請ができますので、学資保険に加入した後に保険会社から送付される保険料の証明書を持って、会社員は年末調整時に、自営業の方は確定申告時に申請してくださいね。
満期時に受け取るお金に税金がかからない
学資保険に加入すると、商品によっては進学時期ごとにお祝い金がもらえ、満期を迎えると満期金が受け取れます。
これらの受け取ったお金は一時所得に分類され、受け取ったお金と払い込んだお金の差額が50万円以下であると税金がかからないのです。
例えば、払い込んだ保険料の総額が200万円で、満期金が240万円の場合は、税金を支払う義務はないのです。
各保険会社の返戻率でいくと、差額が50万円を超えることがなさそうなので、税金を支払うことは考えなくてよさそうですね。
しかし、満期金の受け取りを子どもに設定している場合は税金がかかる可能性があるので注意してください。
契約者である親が万一のときの保障が付いている
学資保険には、親が死亡、または定められた高度障害の状態になると、以後の保険料の支払いが免除になり、保険料を支払わなくても契約どおりの満期金を受け取ることができる保障がほとんど付いているのです。
預金や投資ではなく、学資保険を選ぶ理由がここにあるのではないでしょうか?
親の死亡や病気により学費が払えなくなることで、子どもの進路が危ぶまれることを避けるために親目線で作られたものが学資保険なのです。
子どもの保障を付けることができる
学資保険の商品によっては、子どもがケガや病気になったときに保険金が支払われる医療保障や、親に万一のことがあった場合に、その時点から年金が受け取れる育英年金特約を付けることができるのです。
こういった保障を付けてしまうと元本割れしてしまい、返戻率の低い学資保険となってしまいますので、貯蓄性を重視したい方は契約の際にあれこれ特約をつけることのないよう気をつけましょう。
学資保険のデメリットとは
途中で解約すると元本割れしてしまう
学資保険は途中で解約すると、戻ってくる額がそれまでに支払った保険料の総額よりも少なくなり損をしてしまいます。
途中解約はなるべく避けたいものですので、保険会社へ連絡して保険料を減額してもらうなど、保険の見直しの相談をしましょう。
どうしても解約せざるを得ない場合は、解約した時点の返戻率が100%を下回っていないか、解約返戻金がいくらになるのか、保険会社へ確認して判断してくださいね。
金利が固定されている
加入時の予定利率で固定されているため、金利が上がったときに金利のいい商品に切り替えようにも、途中解約すると損してしまうのでそれができません。
普通に預金していたら、自由がききますので、金利が上がるとよりいい商品に乗り換えることが可能なのです。
子どもの年齢制限がある
ほとんどの学資保険には、加入する子どもに年齢制限があります。
年齢は様々ですが、加入の対象年齢が7歳までだったり、12歳までだったりと商品によって違いがあるのです。
学資保険の加入は子どもの年齢が小さければ小さいほど有利です。
例えば、子どもが0歳のときに加入するのと、5歳になって加入する場合で比較すると、0歳で加入した方が、親などの契約者の年齢も若いので保険料が安くなります。
ある保険会社の例を以下でご紹介します。
※保険料払込期間は18歳までで、保険料払込方法は月払いとする
- 契約者30歳(男性)子ども5歳のケース
- 契約者25歳(男性)子ども0歳のケース
保険料:12,688円
保険料:8,372円
子ども年齢が上がれば、支払い期間が短くなるので月々の保険料の負担が大きくなってしまうのです。
また、親などの契約者も年齢による制限と健康状態で学資保険に加入ができなくなる可能性があるのです。
契約者の健康告知が必要
ほとんどの学資保険には、親などの契約者の死亡や定められた高度障害の状態になると、保険料の払い込みが免除になる特約が付帯されています。
払い込みが免除になっても、お祝い金や満期金が受け取れるシステムがあるため、加入時には契約者の健康状態を申告しないといけないのです。
こういった理由から、健康状態の申告以外にも加入には年齢も制限されている商品もあります。
学資保険を検討するのなら、自分の健康状態が良好な若い時期、つまり子どもの年齢が小さいときに加入することをおススメします。
保険会社が倒産すると満期金が減らされる可能性がある
保険会社が倒産してしまうと、満期金が予定金額より下回る可能性があります。
預金の場合、銀行が倒産してもペイオフという制度によって、1000万円までは払い戻してもらえるのですが、学資保険の場合はこの制度が適用されません。
リスクを分散させる意味で、学資保険に頼り過ぎないよう、教育資金の準備方法を考えておくとこも大事なのです。
子供が産まれたら学資保険加入の必要性を感じる?他の選択肢をご紹介します
学資保険は教育資金をリスクなく安定的に貯金するにはいい商品なのですが、学資保険に頼らなくてもお金を増やす方法ってあるのでしょうか?
FXや株でお金を増やす方法がありますが、経済の動向に気を配りながら積極的にお金を運用するのが苦手な方にはヒヤヒヤしますよね。
教育資金は、必要な時期に貯まっていないといけないものなので、運用の失敗は避けたいものです。
貯蓄性と安定性をもって教育費を確保できるという点で、学資保険と比較される個人向け国債と低解約返戻金型保険をご紹介します。
個人向け国債とは
個人向け国債とは、国が発行する債券(借金)を個人投資家に買いやすくしたもので、リスクが低い投資のひとつとされています。
1年以上保有すると元本割れすることがなく、購入1年後には途中解約することもできます。
金利が固定されている学資保険と違い、個人向け国債は、金利が固定と変動の二つから選ぶことができます。
将来の金利が上昇したことを想像すると、金利が固定されている学資保険と比べれば、個人向け国債は金利が変動するという点にメリットがあります。
しかし、学資保険の返戻率103%~110%が多い中、個人向け国債の10年変動型の金利で0.05%なので、毎月1万円分の国債をコツコツと購入する場合であるならば、日本の経済がかなりの好景気にならない限り、収益に大きな差がないかもしれません。
また月単位で払い込みを考えている場合、学資保険は毎月保険料が自動で引き落とされるので手間がかかりませんが、個人向け国債は毎月国債を購入しなければなりません。
個人向け国債は、何もせず普通に貯金をしていくよりは効率的に貯蓄ができるので、経済の動向をこまめにチェックすることが好きで、低リスクの資産運用がしたい方にはおススメの投資です。
低解約返戻金型終身保険とは
低解約返戻金型終身保険とは、保険料の払い込み期間の解約返戻金を少なくすることにより、割安な保険料で加入することができる保険で、学資保険と違うのは、契約者の死亡保障であることです。
低解約返戻金型終身保険は、保険料払込期間が終了してから解約すると、払い込んだ保険料の総額よりも増えて戻ってくる仕組みになっています。
保障期間に契約者が死亡した場合、保険金を受け取ることができますが、死亡することなく保険料払込期間が過ぎると、払い込んだ保険料をそのまま据え置くことができ、置いておくと返戻率が上がるためお金が増え続けます。
つまり、保険料払込期間が終了してから解約すると、払い込んだ保険料の総額よりも増えて戻ってくる点にメリットがある保険なのです。
払込期間や解約返戻金を受け取るタイミングは自由に設定できることから、保険料払込期間の終了を子どもの18歳時に設定し、大学入学時期に解約すると、解約返戻金を学費として利用できます。
ところで、子どもが大学に進学しない場合は学費の必要がなくなりますよね。
そんな時はお金を使う必要がないので解約せず、そのまま置いておいてお金を増やし続ければいいのです。
そして、子どもの結婚資金、自分の老後資金などのために据え置いて、必要なときに解約して活用することができるんです。
デメリットは、途中で解約すると返戻金が少ないことです。
払い込んだ保険料の総額よりも少ない額でお金が戻ってくるので、途中解約は元本割れしてしまうのです。
また、子どもの医療保障などをつけることができませんので、子どもの保障を付けたい方は、別途子どもの医療保険に加入することを考えましょう。
学資保険 |
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普通預金 |
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定期預金 |
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個人向け国債(10年型) |
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学資保険を比較するときに見て欲しいポイント
学資保険を比較しているときに見て欲しいポイントは以下の通りです。
・保障型?貯蓄型?
・学資保険金を受け取るタイミング
学資保険の返戻率を確認しよう
先に述べましたが、返戻率とは、払い込んだ保険料の総額に対して、どのくらいプラスになって返ってくるかを示したもので、返戻率が高ければ高いほど、貯蓄性の高い保険になることから、返戻率はとても重要なのです。
学資保険の加入時における子どもの年齢が0歳に近いほど返戻率が高いので、子どもが生まれて学資を検討中の方は早めの加入をおススメします。
保障型?貯蓄型?学資保険の種類を確認しよう
学資保険は教育資金を確保することを目的とした保険なのですが、保険によっては保障を手厚く付帯しているものがあります。
保障が手厚いほど貯蓄性が下がるので、満期金が元本割れしない保険かどうか内容の確認が必要です。
貯蓄性に重きを置くなら、子どもの医療保障や契約者の保障は別で考え、学資保険に必要性のない保障機能がついていないか確認して選ぶようにしましょう。
学資保険の満期金を受け取れる時期を確認しよう
学資保険には、子どもが中学、高校、大学入学時期にお祝い金として保険金が受け取れるタイプがあります。
また、途中でお祝い金を受け取らず、据え置きして大学入学前に満期金で受け取ることもできるタイプの保険もあります。
本当に必要な時期にお金を受け取れるかどうか、受け取る時期のタイミングを確認しましょう。
また、満期金の受け取り時期は、子どもの誕生日と契約日によって変わるので注意が必要です。
例えば、2017年1月2日に生まれた子どもが「18歳満期」の学資保険に0歳の4月に加入したとします。
18歳になるのは2035年1月2日なので、満期金を受け取れるのは2035年4月となり、大学進学時に使いたくて学資保険に加入したのに間に合わないことになります。
この場合、満期金の受け取りを17歳満期に設定しておくと、大学進学時の準備金として間に合うので、加入する月も注意してくださいね。
まとめ
貯蓄性という面だけで見ると、学資保険以外にもお金を貯金する・お金を増やす方法があるので、あえて学資保険に加入する必要はありませんが、子どものための学費を確実に貯金するにはメリットが大きい保険です。
自分のタイプによって貯蓄に対する考えも、仕方も変わってくるので、学資保険に迷っている方は学資保険が自分に合うかどうか、以下を参考にしてみてくださいね。